ノラ・サルモリア「アルゼンチン音楽のリズム・ワークショップ」のメモ
2013年11月27日に渋谷UPLINKにおいて、Nora Sarmoriaによるワークショップが開催された(http://www.uplink.co.jp/event/2013/18326)。アルゼンチン音楽、就中リズムに焦点を当てた内容で、解説の合間にコンピューターから音源や動画を流す他、ピアノ・ボーカルによる実演も披露するなど大変に興味深いものだった。簡単にメモをとったので内容をここに転載する。記号付のアルファベットが表示できないので記号を省いている。
La Chacarera (チャカレラ)
- Chacareraは、Bombo legueroボンボレグエロという大太鼓のリズムが主となる(実際はuにdieresisが付く)。
- Bombo leguero は両面太鼓で、胴は木製、ヘッドは山羊皮が張られる。ヘッドをバチで叩く低い音"Parche"と、同じくリムを叩く高い音"Aro"の二種類の音がある。
- 伝統的なChacareraの編成はBomboの他に、ギターやアコーディオンが入るものが多い。
- 8小節を楽器、次の8小節は歌、という具合に交互に演奏する。
- ダンスミュージックであり、ZambaサンバやCuecaクエーカと同じく対になって踊る。
- リズムは下記譜例の通り。Aroが6/8、Parcheが3/4というポリリズムができている。
この時にCorazonadoなる曲とSilvia Iriondoの曲の音源が流れた。
La Zamba (サンバ)
- スペイン音楽の影響が強いリズム。
- Zambaに似たCuecaという音楽もあり、Zambaは遅く、Cuecaは比較的速く演奏される。
- 伝統的なZamba (Zamba tipica)には、ピアノ曲、ギター曲、歌曲がある。
- リズムは下記譜例の通り。
この時に流れた曲はCuchi LeguizamonによるSi llega a ser tucumanaと、もう一曲Cuchi Leguizamon作曲、Manuel Castilla作詞のもの。
Vidala (ビダラ)
- 伝統的なVidala tipicaは、三つの音程で歌われる。
- 例としてボーカルと太鼓のみの、原始的な印象の曲が流された。
- この時の太鼓の音が独特で、スナッピーのように皮にトリッパが付けられているという説明があった。
- リズムは下記譜例の通り。
Huayno (ウワイノ)
- 上記Vidalaと同じ、トリッパ付きの太鼓の音で下記譜例のようなリズムの音源が流された。
- 本来はコール・アンド・レスポンスを基本とする音楽とのこと。
Carnavali (カルナバリ)
- リズムはHuaynoと同じとのこと。
- メロディは五音程、ペンタトニックを基本としている。
- スネアドラムCajaとTamborで演奏されるとのことで、スネアドラムの音色で下記譜例のような音源が流された。
- 他に三拍子のCarnavaliもある。
Milonga (ミロンガ)
以上がNorte Argentino、アルゼンチン北部のリズムで、Centro y Surつまり中央部および南部には異なるリズムがある。
- 亜熱帯に属する北部に対して、平原が多くPampa大草原が広がるHorizontalな南部という対照。
- Milongaのリズムは二種類ある。
- 以下、田舎のミロンガ、Milonga Camperaのリズム。音源では一つの太鼓で音の高低を表現していた。
Milonga Camperaの音楽家としてはAtahualpa Yupanquiが有名。
- Milonga Camperaに対して、都会のミロンガ、Milonga Urbanaがある。
- リズムは以下の通り3-3-2で、Milonga Camperaよりも速く演奏される(Tangoと同様)。
- いわゆるTipica Milonga Urbanaはピアノとエレキギターで演奏されることが多い。
- Buenos AiresのTangoに大きな影響を与えた。
参考としてSalgan De Lioによる演奏の音源が流された。
Ritmo Afro = Candombe de Argentina (カンドンベ)
- 使われていた楽器は、Tambor Piano、Tambor Chico、Tambor Repique、大小中三つのコンガ風の太鼓。三つのTamborでソンクラーベを演奏する。
第二部ではノラ・サルモリアに対するインタビューが行われ、興味深い話がいろいろ出ていた。
ここではアルゼンチン音楽に関わる固有名詞を聞き取れた範囲で挙げるに止める。
- Ariel Ramirez
- Chango Farias Gomez
- Duo Salteno
- Raul Carnota
- Dino Saluzzi
- Alfombra Magica